松ヶ崎荘
Matsugasaki -sou
a house + a room for rent/Sakyo-ku Kyoto-city/2009/photo_K.Sugino
この集合住宅は、銅版画作家のアトリエ付住宅に2つのワンルームの賃貸住宅を付属させたものである。
特徴は、入口の「切り通し」と2階住戸へのアプローチ。オーナーが同居する賃貸集合住宅では、オーナー住居のプライバシーを賃貸入居者の生活動線から守るように設計するのが普通だろう。しかし「松ヶ崎荘」の貸借人は、オーナー住居のダイニングルームの前をかすめながら通り、築山を上り、建物正面についた階段を登って自分の住戸にたどり着く。集合住宅がどのような共用空間を用意できるのかという建築計画的課題があるとすれば、「松ヶ崎荘」ではエントランスホールでも集会室でもなく、アプローチ空間としての庭、大きな緑地全体を、オーナーも含めて共有することが提案されたことになる。大きな緑地も、当初から建て主の要望として提示されたものである。それまで、このゆとりある敷地に住みながら、敷地の大半を舗装された駐車場として眺めてきたオーナーにとって、ゆったりとした雑木林のような空間を通って自宅に入ることは、建替えの主たる動機のひとつであった。
建物のことではなく、庭をどれだけ広くとり、そこにどのようなアイディアを提示するかというランドスケープデザイン的課題である。
土の切り通しは地盤改良材を用いた緩やかな土質改良による擁壁で、安価で一定の強度がある、魅力的な切り通しが実現できている。
所在地:京都市左京区
主要用途:専用住宅+貸室(2)
敷地面積:326.27㎡
建築面積:105.19㎡
延床面積:181.80㎡
規模:地上2階建
主体構造:木造在来工法
施工:サクジ工務店
掲載誌: 新建築'10.02 、住まいの設計'13.0





















