◯住まいいろいろ12:「これからの家」正解ないほど可能性広く

 

【日本】

先日、久しぶりに京都・西陣を歩いた。伝統的な町家の並ぶ通りをぶらぶらしながら目に入ってきたのは、2階に取り付けられたエアコンの室外機と、家と家の間にボカッと空いた駐車場。今の日本の住まいや街の状況を示す風景のひとつである。

 

歴史的な建築物の保存や再利用に賛同する声を最近、よく聞くが、「それなら、あなたはガレージなしの家でもいいですか」とたずねたら、OKする人はまずいないだろう。ガレージなどないところに町家の美しさがある一方で、そんな現代的な機能抜きの生活も不便だ。だから、やっかいなのである。

 

では現代的な機能にふさわしい住まいは、と問われても困ってしまう。町屋が軒を連ねた江戸時代は、資材や様式が限られていたからおのずと答えも決まっていた。可能性が広がった今、とりあえず「正解」はないとしか言えない。

 

戦後、日本人は驚くほどの早さで豊かになった。生活様式もすっかり変わり、モノを最低限の機能だけで選ばなくなっている。

 

服は暖かさだけでなく、色や形を吟味するし、食べ物など栄養の取りすぎでむしろ、カロリーの少ない方が好まれるほどだ.家も雨露や寒さをしのぐのは大前提で、スタイルや空間の快適さに重点がシフトしている。

 

選択の幅が広がった分、あれもこれもと多くの欲望を満たしたくなりがちだ。身の丈とのバランスをとるため、試行錯誤を繰り返すことが必要になるが、そこに衣食と住の大きな違いがある。

 

食なら1日3回、衣なら四季ごとに学べ、失敗も後の成功に生かせる。住の難しさはそれが数十年に1回という点だ。世代がかわると反省点が伝わらないことも起きる。

 

欧米の衣服や料理はほとんど我がモノとした日本も、住に限っては、「西洋文化」を消化する過程はまだまだ途中。明治以来の140年では短い。洋風などという表現がまだ通用しているのもその証拠だろう。

 

この状況で、新しく家を建てる場合、どうすればいいのか。能力の高い建築家や工務店が重要なことはもちろんなのだが、これだけの広い可能性を探る以上、依頼する側と専門家で「同床異夢」ということも、大いにありうる。

 

ここが、建築(住まい)の恐ろしく、しかし面白いところ。アートと言われるゆえんでもある。くれぐれもルノアールのような絵を求めてピカソに頼まないように。

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