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◯住まいいろいろ10:「リフォーム」退屈への反発が過激さに

 

【エディンバラ】

小学1年の娘がハマったテレビ番組がある。NHK教育で昨年、6月と10月下旬から3、4回ずつ流された英国BBC放送制作のリフォーム番組「夢の家を作ろう」である。

 

日本の同じような番組と決定的に違うのは、改装のアイデアをすべて子どもが出して、親たちは改装中、旅行に行かされること。そして、帰宅して変わり果てた我が家の姿に直面し、本気で泣き出すか、怒り出すというところだ。

 

子どもの発想は奇想天外なうえ、無責任である。キッチンがマクドナルドの店内に様変わり。また、別の回では、居間に映画館のように固定座席が並んだ。さらに、両親の寝室が日本のカプセルホテルになり、父親のトイレが長いので、一定時間以上になると勝手にドアが開く、といった具合だ。

娘は番組を見た後、「うちにも絶対来て欲しい!」となかなか興奮がさめなかった。

 

よくこんな企画につき合う家族がいるものだと感心しつつ、単に低俗なお笑い番組ではすまされないものを感じた。これが英国の視聴者に支持されるのは、現実の住まいや街並みがあまりに落ち着いているため、その反動として過激さを求める気分が、見る人の心の中に潜んでいるせいもあるのではないか。

 

昨年9月、英国を家族で回った。歴史的な景観を残すエディンバラ旧市街地の落ち着いた雰囲気を満喫していた時、娘が生意気にも言った。

 

「ここが一番退屈」。かつて一緒に行ったオランダやスイスの街と比べても、色と形が同じすぎるというのだ。

そう言われれば、そうだ。たぶん英国の子どもや若者、一部の大人も同じ気持ちなのだ。

 

この古めかしい国が前衛的なロック発祥の地なのも、この反発の「気持ち」が原動力なのだろう。優等生的な街並みやシブい住まいはもううんざり、カビくさいアンティーク家具などクソくらえ、というわけだ。

 

日本人は、色調の整った西欧の街並みをうらやましく思う。逆に西欧人が、混在状況の日本の風景にあこがれることがある。バブルの時代、多くの西欧人建築家が仕事を求めて日本にやって来たが、あるフランス人建築家は東京の風景を見て言った。

 

「なんて活気に満ちて魅力的な街なんだ」

 

欧州の調和と、アジアの混沌。どちらが「いい」とは実は、簡単には決められないのかもしれない。

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